『罪深きシリア観光旅行』感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ

『罪深きシリア観光旅行』感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ 書評

『罪深きシリア観光旅行』とは?

罪深きシリア観光旅行』とは、フリーライターでジャーナリストの桐島滋が第3回わたしの旅ブックス新人賞を受賞し、2023年11月15日に株式会社産業編集センターより出版されました。


どんな内容?あらすじは?

テレビのドキュメンタリーを制作する会社にいた筆者が、内戦が続くシリアを見てみたいと、訪問した見聞録となっています。中東のレバノンでアラビア語を学ぶ留学もしていた背景もあり、シリアに対する関心があったそうです。

第一章は、シリアへ

第二章が、戦下の国

第三章が、地方の町々

第四章が、オマルの故郷

第五章が、アレッポの日常

第六章が、さらばマーゼン

第七章が、深い哀しみと静かな怒り

合計7章で構成されています。

酔わせる映画 ヴァカンスの朝はシードルで始まる』や『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』のような本でした。

ネタバレ

日本人から見ると、「シリア」と言われても遠い異国。内戦や戦争が続いている国の印象しかありません。

本書では、そんなシリアに訪問した筆者が、現在のシリアの状況や様子を綴っています。

シリアとは?

本書によると、民間人だけで30万人の死者が出ており、難民は670万人。イスラム国などイスラム過激派がいる超独裁国家。

筆者の桐島滋氏は、レバノンに住んでいた頃に、イタリア人のジャーナリストの紹介でアマルというレバノン人女性を通訳にして取材をしていた。

そんな中、取材先でインド人のYouTuberと出会い、シリアへ行きたいと話していたのをきっかけに、筆者もアマルに頼み、シリアへ行くことができたそう。

本書の冒頭で重要な点が書かれています。

「心配なのはこの滞在が、下手をすればシリア政府の宣伝の片棒を担ぐことになってしまうということである」

そう、普通のトリップブックなら、ありのままのその国の魅力を伝えればいいが、内戦が続いているシリアを手放しで褒めたり宣伝するわけにはいかないのでしょう。

軍事施設は撮影できない!サイドナヤ刑務所

日本人がイメージしやすいのは北朝鮮でしょう。

訪問するにも特別なビザやアテンドが必要。滞在中もガイドがついてまわり、監視されている状態。

特に軍事施設を写真に撮ることはできないのはシリアでも同じ。

筆者が「サイドナヤ刑務所」を撮影しようとすると、ガイドから「軍事施設は撮影してはならない」と、静かに忠告を受ける場面は、緊張感が伝わった。

筆者「刑務所も軍事施設なの?」と内心知っていながら、さりげなく質問をし、違う工場を指さしながらそれとなく撮影した。

まとめ

本書を一般的な旅行書の類と同列に扱うのはかなり難しい。

旅行として簡単に行けないし、行こうと思っても簡単には行けない。

一方で、ジャーナリズム書や歴史的文学書としての立ち位置かと言われると、本書には深堀りが弱く、筆者も知見があるわけではないので、解説が稚拙だ。

そう考えると、見聞録や「わたしの旅ブックス」としての立ち位置がふさわしいだろう。

一般的に爆発的なヒットをする内容ではないが、世の中に生まれ出るべき一冊である良書でした。

今後、シリアの内戦が終わったら、本書を持って訪れてみたい。旅好きのおすすめです。


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