『大インダス世界への旅』感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ

『大インダス世界への旅』感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ 書評

『大インダス世界への旅』とは?

『大インダス世界への旅』とは、写真家で登山家の船尾修が執筆し、2022年11月26日に彩流社より出版されました。本書は梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞しています。


どんな内容?あらすじは?

『大インダス世界への旅』は、チベット、インド、パキスタンアフガニスタンといったインダス川をメインにした各地域のエピソードが書かれた紀行文となっています。

第一章が、チベット人の聖山カン・リンポチェを巡礼する

第二章が、ラダックの仮面舞儀礼

第三章が、ザンスカール 幻の「氷の回廊」をゆく

第四章が、国境未確定の「観光地」カシミールの現実

第五章が、大地震があぶりだしたカシミールの本当の問題

第六章が、もうひとつの世界の屋根カラコルム山脈

第七章が、三蔵法師もかつて目指した桃源郷スワート渓谷

第八章が、混迷のアフガニスタンにバーミヤン大仏を見に行く

第九章が、神々との饗宴に彩られたカラーシャの暮らす谷

第10章が、肥沃な大地に根付くパンジャーブの歴史と文化

第11章が、シンド州でインダス文明の残り香を嗅ぐ

合計11章で構成されています。

罪深きシリア観光旅行』や『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』のような本でした。

ネタバレ

本書は、一つの国や地域を旅する紀行文とは異なり、インダス川を中心とした、各国や地域をエピソード的にまとめています。

例えば、1章の聖山カン・リンポチェでは山での風景描写が多く、登山好きの人には嬉しい内容。

面白い点としては「鳥葬」を紹介しています。

火葬や土葬は有名ですが、チベットの山では人を弔う場所がなく、火を使わずに葬れる、「鳥葬」が便利なのです。

もちろん、それだけでなく仏教的死生観もあり、行われている儀式。

本書では、筆者が立ち合った「鳥葬」を読むことができます。

山羊の調理

山羊料理自体、あまり日本では見かけませんが、2章のラダックの仮面舞儀礼では、筆者が宿で見た、山羊の調理風景が見えます。

生き物を調理する際の手際の良さや、食べれない内蔵を、窓から外に出すことで、夜になると凍る自然の冷蔵庫など、生きる知恵が溢れていました。

ほかにも、日本でも使われるホオズキが、ラダックでも使われており、日本では別名「鬼灯」というように、仏教の観点から意味が隠れているようです。

昔からの仕事がなくなり、出稼ぎに行く人も

本書を読んでいると、秘境地のような感じ方をしますが、実際には、インダス川で魚が取れなくなり、漁師やその地域で仕事をしていた人たちは、船を売り、土木工事など出稼ぎへ行っている。

いつしか自然の消滅、観光地が朽ち果てていく姿は、日本の地方や田舎を感じさせます。

まとめ

インダス川を中心とした、およそ5カ国の地域が読める本書。

個人的にはパキスタンに訪れた際に、現地のラジオ局に出演し、カレーの話で論争がおきたエピソードが微笑ましかったです。

難しそうに見える内容ですが、読みやすくサクサク読めるので、秘境や旅好きにおすすめの一冊でしょう。


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