『テトリス・エフェクト(THE TETRIS EFFECT)』本の感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ

『テトリス・エフェクト(THE TETRIS EFFECT)』本の感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ 書評

『テトリス・エフェクト(THE TETRIS EFFECT)』とは?

『テトリス・エフェクト(THE TETRIS EFFECT)』とは、CENTの編集者であるダン・アッカーマン(Dan・Ackerman)の執筆、小林啓倫氏の翻訳で、2017年に株式会社白揚社より出版されました。

どんな内容?あらすじは?

『テトリス・エフェクト(THE TETRIS EFFECT)』、世界的に遊ばれているゲームソフト「テトリス」にまつわる、大きな商流とそこに至るまでの翻弄される人々のノンフィクション物語です。

パート1

1 グレイト・レース

2 アレクセイ・レオニードビッチ・パジトノフ

3 アメリカへ

4 最初のブロック

5 ザ・ブラックオニキス

6 広がるクチコミ

パート2

7 鉄のカーテンの向こうから

8 ミラーソフトへ

9 ロシア人がやってくる

10 「悪魔の罠」

11 ELORGへようこそ

12 テトリス、ラスベガスをのみこむ

パート3

13 防弾の契約

14 秘密のプラン

15 迫りくる嵐

16 大きな賭け

17 詰め寄るライバルたち

18 チキンで会いましょう

19 ふたつのテトリスの物語

エピドーグ 最後のブロック

合計20章とボーナスコラムで構成されています。

『アップル、アマゾン、グーグルの競争戦略』や『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』、『フラグメント化する世界 ーGAFAの先へー』を読んでおくとより深く理解できるでしょう。

ネタバレ

本書『テトリス・エフェクト(THE TETRIS EFFECT)』は、非常に複雑に絡みあった物語となっています。

本作には、主要な人物が2人。彼らが鍵となり、「テトリス」というゲームソフトが、世界中で遊ばれるビッグタイトルへと進化しました。

ヘンク・ロジャースと、ザ・ブラックオニキス

主要人物の一人、ヘンク・ロジャース。

アメリカで生まれ育ち、ハワイ大学でサーフィンとコンピューターを満喫する若者でした。

コンピューター、パソコンに多大なる影響を受け、出来る限りパソコンを触って生きていきたいと考えていましたが、当時1960年代後半では、パソコンは一部のパソコン室にしか置いてなく、さらに利用時間も限られていました。

しかも、ヘンク・ロジャースがやりたかったことは、単純なパソコンゲームなどではなく、プログラミングで、当時のパソコンスペックでは、限られた時間でプログラムを組むのには多大な時間が必要になっているのです。

1976年になると、日本へ以上。家族がやっている宝石商を手伝いながらビジネスを学ぶのですが、彼の真価となるコンピューター技術は、停滞する時期でもあります。

ヘンク・ロジャースは、自分だけの日本でのビジネスを始めようと考え、まずは友人に副業で日立製作所向けのプログラミングを開始。

小遣い稼ぎにもなるし、大手テクノロジー企業を相手に、プログラミングの仕事を請け負っているという信用も得られるのです。

これは、2020年になり、副業やフリーランスが当たり前の時代ではなく、バリバリ昭和の1982年のことです。

自作ゲームの開発、そして売り込み

しかし、請負の仕事だけでは食べていくことはもちろん、大手企業の注文や約束反故に振り回される日々。ある日、秋葉原で見かけた「ウィザードリィ」などに触発され、自身でゲームの制作を始めたのでした。

そして、後のドラゴンクエストやファイナルファンタジーの礎となる、「ザ・ブラックオニキス」という名のロールプレイングゲームが誕生したのです。

売り込みそして宣伝

プロダクト製品というのは、生み出せばOKではなく、売れなければ意味がありません。売るためには世間の人に認知してもらうこと、そして在庫を抱えて、流通に乗せて、店頭にならばなければ、せっかく買いに来たお客さんを逃してしまいます。

ヘンク・ロジャースはいくつかの会社にパッケージごとの売り込みを開始(いわゆる生産から流通、宣伝までを一手に行い売れた分をレベニューシェアするやり方)。

1社目は上手くいかなかったが、2社目のソフトバンクが話を聞いてくれて、当時のソフトバンクは中堅のソフトウェア流通業者だったので、3000本買い取り、流通から販売まで実施してくれるということになりました。

実際は蓋を開けてみると、600本しか発注してくれず、発売から1本も売れないような事態に直面。

ヘンク・ロジャースは、当時のゲームソフト系の雑誌、新聞社へゲームとともに持参し、編集者に売り込みを実施しました。

彼らは最初は怪訝としていましたが、ゲームをプレイしてみると、RPGがない時代、一気に引き込まれて特集が組まれ、世間の認知度が一気に高まり、2万本以上が売れたのです。

しかし、その後、大手企業であるドラゴンクエストやファイナルファンタジーの会社が目をつけ、より拡大的なRPGを製作し、大手に食われてしまいました。

アレクセイ・パジトノフ

同じような苦い経験をしようとしている人物。それがもう一人の主要人物であるアレクセイです。

彼は、ロシアで生まれ、っ育ち、科学技術に携わりながら、「テトリス」というコンピューターパソコンゲームを自作。

しかし、当時のロシア、そしてソ連は閉鎖的で、共産主義がはびこり、ヘンク・ロジャースのように売り込みを行いお金を稼ぐというのが難しい時代でした。

フロッピーディスクを利用し、友達へ。そして友達から友達へ。そして知らない第三者へとゲームは行き渡り、モスクワの街中で「テトリス」をこっそりと遊ぶ人たちへと広がっていったのです。

しかし、どんなに行き渡っても、アレクセイのもとへ一円も入らず、苦い時間だけが過ぎて行くのでした。(というか、そんなに広がっていることも知らないのです。)

二人が交差

では、場所も経験も異なる二人がどうやって出会い、なぜ「テトリス」が世界中の人々を魅了するゲームへと真価したのか、これが本書『テトリス・エフェクト(THE TETRIS EFFECT)』の醍醐味です。

ヘンク・ロジャースは、その後いくつかの自分のゲームを制作し、同様にヒットをさせたが、苦労も多く、自分で開発から制作まで行うのは多大なエネルギーを消費することを感じ始めていました。

そこで、世界にあるまだ花の開いていないソフトを見つけて、日本市場で売るというビジネスへ切り替えたのです。

ある日、任天堂の主要人物と会合し、内密に「ゲームボーイ」を見せてくれたのでした。

ヘンク・ロジャースは、このゲームボーイと、コンピューター版のサブライセンスでやってきた「テトリス」が組み合わさり、ハンドヘルド版の権利を手に入れ、爆発的に大ヒットすることが繋がったのです。

ヘンク・ロジャースは、ロシアへ行き、開発者そして、権利を持つ、人物、アレクセイと出会うのでした。

まとめ

誰もが当たり前のように遊んでいる「テトリス」。実は、名も知らぬ、一人の人間が生み出し、幾重もの奇蹟が組み合わさり、大ヒットとなったのです。

ヘンク・ロジャースとアレクセイは、ふたりとも、大手企業にしてやられた経験があるのと、個人でコンピューターが好きで、ゲームを開発したという似た者同士。いつしかビジネスパートナーから、友情を育み、今では権利関係を扱い「ザ・テトリス・カンパニー」を共同で運営しています。

もし、ヘンク・ロジャースのザ・ブラックオニキスが売れなかったら?

ヘンク・ロジャースは、コンピューター事業を畳み、宝石商へ戻っていたことでしょう。

任天堂がゲームボーイを開発していなかったら?ゲームボーイのハンドヘルド版の権利が渡っていなかったら?

アレクセイが権利を他の営利団体に渡していたら?など、偶然の可能性は消えていたことでしょう。

ただの落ちゲーパズルゲームである「テトリス」を世界中が魅了するまでには幾重のハードルがあったのです。

昔、電脳アイドルとして名を馳せ20歳前後で芸能界を引退し、IT会社を立ち上げた千葉麗子氏の著書『小娘社長奮闘記』で、画期的な若者向けのゴルフゲームを任天堂へ持ち込んだら、すでに似たような内容のゲームを開発しており、それが「みんなのゴルフ」だったのです。

売れるゲームを制作することも大変ですし、作ったあとに売るのはもっと大変なことです。

ゲーム業界の光と闇が、スパイや探偵物語のような緊張感を持たす本書『テトリス・エフェクト(THE TETRIS EFFECT)』、業界へ働きたい方に特におすすめ一冊です。

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