『M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話』感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ

『M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話』感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ イベント

『森村泰昌 M式 「海の幸」展』とは?

森村泰昌 M式 「海の幸」展』は、現代美術家、森村泰昌がアーティゾン美術館(ARTIZON MUSEUM)で2021年10月2日から開催し、来年2022年1月10日まで会期している展覧会です。

どんな内容?あらすじは?

『M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話』は、現代美術家である森村泰昌と石橋財団がセッションした美術展です。石橋財団が抱えている画家、青木繁の作品にインスパイアを受け、森村泰昌が独自の解釈で作品を仕上げた内容となっています。

和田誠展や、横尾忠則展のような展覧会ですね。

ネタバレ

そもそも、森村泰昌とはどんなアーティストなんでしょうか?

森村泰昌は、1951年生まれの2021年現在で70歳という熟年ですが、とても若々しく意欲的に作品を輩出しています。

1985年にフィンセント・ファン・ゴッホを模倣し、自身が彼になりきるという作品を世に出し、現在の作風へと繋がります。

森村泰昌の作風とは?

一見すると、モノマネや模倣画家と同様なイメージですが、本展覧でもあるように「彼の独自の解釈を作品に広げる、発展させる」のが持ち味となっていました。

つまり、ただ、オリジナルを模写するだけなら技量のみですが、自身にペイントを仕上げて、さらにそこから広がりを持った作品へと昇華する作業が魅力にもなるのです。

青木繁の「海の幸」を作品に仕上げる

では、どんな独自性を出したのかを、本展覧を例に紹介しましょう。

青木繁は1882年の明治時代に活躍した画家で、代表作が自身が20代で描きあげた本展覧会でもモチーフとなっている『海の幸』が、評価されました。

しかし、最終的には1911年28歳という若さで亡くなり、死後に評価が高まるヴィンセント・ヴァン・ゴッホのような人生でもあります。

森村泰昌と青木繁

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今回は、アーティゾン美術館、そして石橋財団でのジャムセッションの2回目の催し。1回目は鴻池朋子を迎え2020年に開催され、特定の画家を対象やモチーフにしたわけでなく、結構自由に作品を発表していたようです。

前回と比べて、2回目の今回は、森村泰昌側か石橋財団側が打診したのか不明ですが、石橋財団が貯蔵している「青木繁の作品」をおそらく森村側に提案し、森村側が、『海の幸』をピックアップして作品に仕上げたのではないか、と推察しています。

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さて、そんな森村泰昌の作品と展覧会構成ですが、

第一章は、「青木繁」の作品展示です。全てではありませんが、青木繁の作品を展示することで、まずどんな画家なのか、どんな作品を描いていたのかを説明。また自画像などは、森村側もセルフペイントを実施した自画像を横に載せて「本展覧会がどんな内容なのか」をイメージさせてくれました。

森村泰昌の作品

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序章が「私」を見つめると題し、上記で説明したように、

・青木繁の自画像

・青木繁の顔

などに加えて、

・森村泰昌 自画像/青春

・森村泰昌 自画像/青春(習作1)

・森村泰昌 自画像/青春(習作2)

・・森村泰昌 自画像/青春(習作3)

などを紹介しています。

第一章「海の幸」鑑賞

そして、第一章では、青木繁の『海の幸』『海』『海景』『月下滞船図』『春』『秋』『わだつみのいろこの宮』『大穴牟知命』と、青木繁の作品・世界観を伝えてくれました。

第二章は「海の幸」研究

ここからは実際に森村泰昌の作品や、制作過程が垣間見えるゾーンになっていました。

特に森村泰昌自身が着こなした衣装展示もあってファッションや洋服好きには魅力的な展示物ではないでしょうか。

第三章 M式「海の幸」変装曲

さて、ここからが真骨頂です。

変奏曲ではなく、変装曲。見事なハーモニーが奏でられた森村泰昌の本展覧の集大成が大広間にダダーンと飾られて圧巻でした。

横尾忠則のような苛烈でも、和田誠のようなファンシーでもなく、

森村泰昌の作風は、エキセントリック。変態性のような印象を受けました。

ここではアーティゾン美術館としてフォルムと、森村泰昌自身の作品のアンマッチさが、奇妙な異世界を作り出しています。

第四章 ワタシガタリの神話

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ほぼラストとなる、四章は、映像作品です。

企画・出演・演出を森村泰昌自身が行い、森村泰昌が演じる青木繁自身となり、青木繁に対して説教を行う独演会のような映像作品です。

一見すると、淡々としたシュールな内容ですが、よくよく聴いてみると、森村自身が青木繁を掴もうとしていた努力のあとが垣間見え、結果として、森村泰昌でもなく、青木繁でもない、第3の何かに化けていたのです。

そうなのです。森村泰昌の作品って、模写でも模倣でもモノマネでもなくて、「化ける」のです。

モチーフでも、自身でもない、何かに変幻する。

それが彼の芸術家としての力であり、魅力だと思いました。

まとめ

ラストは、「終章」がありますが、個人的におまけのような感覚でしたので、気になる方はぜひ本展覧会へ行ってみてください。

そして、現代美術家である森村泰昌がなぜ評価され、ここまで稀代な芸術家として名を馳せているのか、深く理解できました。

現代美術が苦手な方こそ、ぜひ足を運んでいただきたいおすすめの作品展です。

また、同時開催の石橋財団コレクション選と「印象派ー画家たちの友情物語 特集」、「コーナー展示 挿絵本にみる20世紀フランスとワイン」も面白かったので、こちらは別途ご紹介しますね。

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