『ムーラン・ルージュ』とは?
『ムーラン・ルージュ』とは、バズ・ラーマン監督によるフランス・パリの劇場「ムーラン・ルージュ」を舞台にしたミュージカル映画。映画のヒットから演劇・舞台・ミュージカル化され、2023年7月から8月31日まで日本版が東京・日比谷の帝国劇場で開催されました。
※YouTubeでまとめてみました!(動画内はネタバレなし)
どんな内容?あらすじは?
1899年の貴族と市民の階級が明確化されていた時代のフランス・パリ。舞台は「赤い風車」として現在もキャバレー・舞台として存在する「ムーラン・ルージュ」、そこでスターとして輝くサティーンと、彼女に惚れたアメリカからやってきたクリスチャン、そして公爵であるディーク。2人の男に惚れられ、ムーラン・ルージュの行く末とともに彩られる世界と物語です。
わかりやすくいうと、美女が2人の階級の異なる2人から求愛され、キャバレーの経営もやばいし、でも愛する人は一人だし、どうしよう。という内容です。簡単にいうと。
けれど、本舞台の真骨頂はストーリーよりも、絢爛豪華な舞台とエキサイティングなパフォーマンス。
今回は、日本公演の感想とともに紹介したいと思います。以下ネタバレ含むので気になる方はご遠慮ください。
ネタバレ
場所は東京・日比谷にある「帝国劇場」。有楽町駅からも徒歩4分ほどという好立地。
劇場前では多くの観客が、入り口に貼ってあるポスターやビジュアルイメージの写真撮影。
人並みをすり抜けて、劇場に入ると、すぐ驚いたのはロビーが全体に赤い絨毯や赤い色合いで埋め尽くされていること。
そして、劇中テーマ曲が流れ、にぎやかな東京から一気にパリにある「ムーラン・ルージュ」に足を踏み入れたかのよう。
他のお客さんも同じ気持ちなんだろう。
上を見上げ、下を見つめて、左右を何度も見渡す。
まるでお城か何かのパーティー会場に訪れた気分♪
劇場内に光る魅惑の「Moulin Rouge」
そんなロビーを抜けると、劇場内の入り口から怪しく光る赤い灯りに気がつく。
誘(いざな)われるまま、入ると、舞台の幕は上がっており、そこにはドでかい看板「Moulin Rouge」が煌々と輝いている。
もう!ここまで来たら、完全に日本にいることや、東京に暑い夏を忘れ、すでにその世界の扉を開いていたのでした。
物語の開幕
さて、開演がスタートし、どんな感じで始まるのだろうかとワクワクしていると、舞台の様子がおかしい。
アンサンブルのダンサーたちが、一人、また一人と、ゆっくりとした動きで開演前にも関わらず登場しているのだ。
映画でいう明るいけれど、予告編が流れている感じに似ている。
そして、一人2人と増えていき、メインのキャストが現れると、一斉に音楽とダンスによるパフォーマンスショーが始まった!
さぁ、Showの始まりだ!
目くるめく夢の世界
もうね、開始からフルスロット!
1流の役者たちが、あれもこれもと華やかなエンターテインメントの踊りとパフォーマンス、歌を繰り広げる。
まるでディズニーランドにいるかのよう。
綺麗な体のラインと、各々引き締まったカラダ。
特に女性は、ヒールも履いているのに、大きく足を上げて、「あーこれ自分だったら明日筋肉痛だろうな」とか考えるほど(笑)
とにかく開始早々10分くらいかな、ダンスと歌とパフォーマンスが怒涛にやってきて、観客誰もが「ムーラン・ルージュ」の世界に引き込まれていった。
サティーンの登場
目まぐるしいほどのダンスショーが一段落着くと、舞台の天井からブランコに乗って降りてくる一人の女性。それがサティーン。
自分が見た公演では望海風斗さんが演じていたが今回は平原綾香さんとダブルキャスト。
これまでの煌めくショウと打って変わって、一人青白い光とダイヤモンドの背景の前で、煌々と歌う鮮烈な歌声。
望海風斗さんって初めて知ったけれど、元々宝塚の男役の方なんですね。
それが細く麗しいサティーンを、けれど高らかな歌声を響かせ、文字通り歌姫の降臨でした。
望海風斗さんは宝塚出身だけあって、流石の一言。
舌鼓に言い難いほど、とにかく発音から発生、輝き、愛情、辛さ、痛み、儚さと万華鏡のように光り方が変わる。
「を」の発音もしっかりしているから、セリフの言い方もつい流しがちにしそうなのを、しっかり耳にすることができた。
プロフェッショナルや~!
クリスチャン役の甲斐翔真さん
相手役は25歳の若手俳優、甲斐翔真さん。若手といっても「RENT」を始めとした舞台やミュージカルにも多く参加し、実力は折り紙付き。
今回初めて知ったけれど、とにかく瑞々しい肉体と、溌剌としたエネルギーがすごく、出だしより後半火がつくタイプ。
幕間後の2幕の出だしは彼のモノローグ・語りから始まるのだけど、スイッチが切り替わっていなかったようで、噛んでしまい本人も苦笑い。
けれど、その後は波に乗ること乗ること。
どんどん惹きつけられて目を奪われていく。
後半の展開、サティーンを愛するがゆえに不器用な様。
ダブルキャストの井上芳雄さんも気になったが、今回は甲斐翔真さんで良かった。
新しい発見。舞台の醍醐味だよね。
二二役、加賀楓さん
メインの一人でありながら、「ムーラン・ルージュ」のサティーンに次ぐ実力者である二二を演じているのが、元モーニング娘。の加賀楓さん。
加賀楓さんは、ハロプロ研修生としてアイドル・パフォーマーとしての基礎を学びながら、いくつもの舞台にも参加。
満を持して、13期メンバーとして加入し、後年はダンスユニット「LIPPS」に参加するほどダンスの実力は圧倒的。
今回、二二役が受かったのも頷ける程、カラダのラインと美しい踊りに感動をずっとしていた。
だって、肩からあの手この手、あの腕この腕と、「え!どっから出てるのその手は!」と思うほど、しなやか。
柔軟を含めて、やっつけでできる所業じゃない。長く積み重ねてきた努力の賜物だろう。
実は加賀楓さんは、研修生時代から期待値は低かった。それは実力というよりもアイドル性やルックス的にファンからは期待されていなかったが、見事にモーニング娘。に加入し、クールで芯の強さを見せた女性へと進化したのです。
彼女のエピソードで好きなのが、ハロプロ研修生時代に、中学生か高校生の同級生に茶化されたときに「言いたいやつには言わせておけばいい」とバッサリ相手にしなかったエピソード。
外野はとやかくいうけど、自分がやるべきことをしっかりやる。そのひたむきで潔さに惚れ惚れします。
ロビーでも、二二役(加賀楓)を目当てに写真撮影をしている女性客も多かったです。
ここでハロプロメンバーが観劇したムーラン・ルージュの感想もぜひご覧になってみてください。※抜けてたらごめんなさい。
平井美葉さん
伊勢鈴蘭さん
一岡伶奈さん
西田汐里さん
佐藤優樹さん
北川莉央さん
あと、ネタバレだから書いちゃうけれど、ワンシーンだけキスシーンがありました。
深いキスではないけれど、相手役の男性にチュッてするシーン。
大人の役なだけに、驚いたけれど、しっかり演じていて素晴らしかったです。
幕間はカフェでまったり過ごす
さて、物語の感想の間ですが、今作は3時間の長丁場。
そのため1幕と2幕の合間に休憩時間が25分あります。
ロビーで休む人もいればトイレに行く人もいますが、帝国劇場って中にカフェがあるんですね。
カフェ「インペリアル」では、ムーラン・ルージュのオリジナルテイストになっていて、カフェの中も幕で閉められた淫靡な雰囲気になってました。
開始前に予約もできるので、2000円でしたがオリジナルコラボセットを頼み席を確保しておいたので、混み合うロビーを避けてゆっくり過ごせました。
こちらおすすめですよ。
2幕スタート
1幕は、とにかく「ムーラン・ルージュ」ってこんな世界ですよ!と伝えるような怒涛のショーステージが中心だったのが、2幕は一転して物語が動いていきます。
お金を持つ公爵と、愛するクリスチャンのどちらも選べなかったサティーン。
結局二股をかけることに。
2人の男性の間で翻弄されていく。(クリスチャンは公爵と付き合っている事も知っています)
そして忍び寄るサティーンの病。
誰を選ぶべきか、何を選択するべきか、悩みながらも自分の答えを導きだす姿に涙が止まりませんでした。
過去の背景、自分だけでなく、「ムーラン・ルージュ」と仲間たちも懸かっている。
そんな彼女が最後に出した答えとは?
松村雄基さんとKさん
脇を固めるのが、ムーラン・ルージュの支配人でもある松村雄基さん。昔のクールでワイルドなヤンキーなイメージが、もうね、物語の道化師というか、全体を指揮する指揮者みたいで、「こんな飄々としたキャラクターも演じられるの!?」と大変驚きました。
そして、歌手でもあるKさん。公爵という役柄であり、ライバルの悪役でもあるため、徹底的に意地悪な感じを出さないといけないんだけれど、彼のサティーンへの愛情や気持ちも伝わり、上手だぁなと感心しました。
でね、凄かったのは、あるダンスシーンで、誰かのハット帽子が落ちてしまったの。
それをアンサンブル含めて誰か拾うのかな?それとも踏んじゃうのかな?それとも蹴って隠すのかな?なんて思っていたけれど、上手にみんな避けながらダンスをしていた。
特にK演じる公爵がサティーンを口説く場面だったので、後ろにあるのが気づいていたのか知らずか、踏むこともなくキレイにサティーンを寝倒していたから、凄かった。
もし、踏んでしまうと、女性を口説くシーンがコントっぽくなっちゃうし、そもそも当時の貴族階級の役柄なのに紳士の象徴でもあるハット帽子を踏んでしまうのはキャラクターにそぐわない。
舞台への経験値の高さからか、全体の雰囲気を壊すことなくやり抜き素晴らしかったです。
ちなみに、防止は暗転の際に、スタッフさんが拾って片付けていました(笑)
まとめ:ラスト
さて、ラストはとても悲しく終わる結末でした。
けれど、そこから悲しみを乗り越え、開幕のときのように、演者たちが煌めくダンスと歌とパフォーマンスを繰り広げ、悲劇なのに、胸の高鳴りが収まらなかったです。
あーこれがムーラン・ルージュだ。悲しみで終わらない。輝くで終わる。
それがムーラン・ルージュなのだ。
しかも、キャストが掃けたあとも、音楽は鳴り続け、観客のスタンディング・オベーションの拍手とともに撮影もOK。いわゆる客だしっってやつですね。
以下動画を録画してみたので、ぜひご覧ください。※人の顔は映ってないと配慮しましたが映ってたらすみません。
コロナ禍で舞台や演劇の上映が中止になり、エンターテインメントの世界が成り立たなくなっていたこの数年。
やっと元に戻ってきたのだとしみじみと感じました。
舞台や生のイベントは当たり前ではない。そのことを一層感じられたからこそ、瞬く「ムーラン・ルージュ」の世界が眩しかったです。
ムーラン・ルージュっていえば、映画版もゴージャで見応えありますよね。ニコール・キッドマンめっちゃ良かったので未見の方はぜひ。