『新感染 ファイナル・エクスプレス』とは?
2016年7月20日に韓国で公開され一躍大ヒット、続いて2017年9月1日に日本でも公開され、興行収入3億1000万円という大ヒットした映画、主演はコーヒプリンス1号店などで有名なコン・ユ氏です。
内容は、ソウルから釜山へ行く新幹線(フランスやヨーロッパを走るTGVのような)に、不審な女性が乗り込み、実はゾンビで乗務員や乗客を噛み、感染させてゾンビの数が増えていき、残った生存者は生き残りをかけて、立ち向かっていくという、ホラーテイストよりもアクション性が高い作品でした。
本作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(原題:釜山行き・부산행、英題:Train to Busan)の、見どころは、ストーリー性とキャラクターが上手にできている所。
ゾンビ映画に限らず、作品は起承転結がしっかりしていないと飽きや退屈が出てきます。特に本作は新幹線という横長の移動車両の中で巻き起こる展開なので、閉鎖的になり広がりが使えません。(広がりが大きいと逆に冗長的になりますが)。
では、どうしているかというと、ポイントとして、途中の停車駅を利用しているのです。
作中では、冒頭でゾンビに襲われ機転を利かせて、隔離に成功。ここを起承転結の起にあたり、一旦途中駅で停車し、軍隊に助けてもらおうとする所、起承転結の承にあたります。ここは一旦ホッとし、安心というか、外に出られたおかげで閉鎖感をなくし、見ている側も一度油断する部分になります。
そして、なんやかんやあって、また乗り込むのですが、ここではこれまでゾンビに逃げていたメンバーたちが立ち向かう、戦っていくという、アクティブな部分になります。逃げる緊張感とは別にアクション性や推理力を活かし、攻めて行くので、観客も怖さよりも熱さが高まるのです。
最後に、起承転結の結に向かうのですが、監督は無慈悲です。前段の熱さを一気に冷ます、クールさをこれでもかというほど見せるのです。言うなれば生きている人間の怖さでしょうか……。
クライマックスに向けて、もうひと波乱があるのですが、最終的にはそれぞれのキャラクターの見せ所を丁寧に見せて、決着をつけるのです。
まとめ
ゾンビ映画でまさか泣くとは思いませんでした。人は決死の際に、どんな感情が生まれるのか、なぜ生きるのか、醜態を晒してまで生きたいですか?考えさせられる人間ドラマが描かれていて鑑賞後の余韻は悪くなかったです。
また、本作『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、小学生の子供と一緒に家族で日曜日の夜9時くらいに見られる程度のグロテスクさなので、血や暴力性のあるシーンが苦手な方でも多少は大丈夫だと思います。
また、『ホテル・ルワンダ』の記事でも書きましたが、
海外旅行へ出かけると、トラブルやテロ、暴動など思いがけない事態に巡り合うことは珍しくありません(ゾンビに遭遇することはないと思いますが)、そのため臨場感のある映画や作品を見て、いざという時に自分だったらどうするのか?を考えておくと良いでしょう。
筆者は、年始にタイのバンコクへ旅行へ行った際に、空港へ向かう電車の中でトラブルが発生しました。友人のキャリーケースを代わりに持っていたので、小さく「何かあったらトランク捨てて逃げるぞ」と耳打ちしました。
この一言で旅慣れしていない友人は「わかった」と、心を決めたのです。
トラブルや問題が発生した時に、人は混乱したり戸惑ったり、フリーズして体が動かなくなることが往々にあります。その際に誰かが指し示すことで、前向きになれるのです。本作でもそういった場面があるので、ぜひ観ながら自分だったらどうするのかシミュレーションしてみてください。
ちなみに、「逃げろ」という言葉は、逆効果と言われています。理由は人は「逃げろ」と言われると事件や問題が発生した方を見て、確認する動作を入れてしまうからです。下手をすると、確認してから「理解する」といった動作もあるのです。そうすると2テンポ遅れて、被害者になってしまうのです。
アメリカの某所でホテルの部屋から乱射事件がありました。プールバーで寛いでいた人たちは、「逃げろ」という言葉を聞いたにも関わらず、その方向、窓を向いていたそうです。
なのでこういった場合は、「事情をあとで説明するから北の方へ一緒に来て」とか「本当に急用だからとにかくトイレまでついてきて」などとして、説明する方が人間は従う生き物だそうです。
もちろん、知らない人や関係がちゃんと構築されていない人に言われてホイホイ付いていくのは論外ですが……。
話がずれましたが、『新感染 ファイナル・エクスプレス』、まだの方はぜひ一度ご覧になってみてくださいね。