『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』とは?
資産運用の自動化サービス「ウェルネスナビ」を立ち上げた元財務官僚の柴山和久氏がダイヤモンド社より2018年に出版した投資や財務管理、家計管理の方法が描かれた本です。
どんな内容?あらすじとは?
柴山和久氏はウェルスナビ代表取締役CEOとして活躍。東京大学法学部卒後に財務省に入職。3年後にハーバードロースクール、INSEADを卒業。ニューヨーク州の弁護士としても活躍。さらにマッキンゼー・アンド・カンパニーに5年間勤めるなど輝かしい経歴をもつ。
では、本書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』も自慢めいた内容かというと実はそうでなく、財務省に入職するも、海外の大学院へ行くために英語力をアップさせるために200万円の教育ローンを払い、大学院を卒業して、財務省を辞めたあとも、次の職場マッキンゼー・アンド・カンパニーが決まるまで何十社と就活をするが面接に通らない苦悩の日々。そして預金残高が8万円まで落ち込むという、厳しい時代を過ごしていました。
本書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』は、奥様がアメリカ・米系の方で、義両親がプライベートバンクを利用し億単位の資産運用をしていたことをキッカケに、投資とは?資産運用とは?その解決に至るまでの内容が詰まっているため、読みやすいのに理解しやすいという充実した内容となっています。
第一章を5つの失敗から学んだ投資の鉄則、時間と世界を味方につける資産運用とは?、日本の資産運用はガラパゴス化している、日本人が知らないかった正しい資産運用、人間の脳は資産運用に向いていない、テクノロジーが実現する豊かな未来、そして、お金から自由になったら何をしたいか、の合計7章に渡って構成されています。
ネタバレ
投資や資産運用の本では、長期に持つこと、分散投資をすることのメリット、積立投資をすること、を基軸に書かれていることがほとんどです。資産を運用する際に、預貯金では利子が低く、運用にはならない。さらに、株式投資の1本化だとリスクも高く、目減りしてしまうという懸念があります。
本書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』では、なぜ長期に渡り、積立を行いながら分散投資をすることが良いのかが丁寧に書かれており読みやすい内容となっています。
例えば、Aさんは相場を気にせずにコツコツと投資をしようと決め、1月から12月まで毎月10万円ずつ積立投資を行っていたとします。Bさんは1月の株価は高いからしばらく様子を観て、株価が下がったところでスタートしようとし、4月に株価がそこを打ったのを確認して、5月から12月までを毎月15万円ずつ積立とします。投資に充てたお金の合計、元本は二人とも120万円です。
さて、12月の時点で、AさんとBさんはどちらの資産が増えたでしょうか?
結果は、Aさんが154万円に、Bさんは、資産の149万円となったのです。
あなたの予想は当たりましたか?
本書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』では、この感覚値や直感ではなく、エクセルを利用すれば10分程度で解ける内容を、計算しないで投資を行う人が多いと言及しているのです。
これまでにいくつかの投資に関する本がありましたが、『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』のように、具体性を示して書かれている内容は少ないため、非常に役立ちました。
また、『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』では、各ページに注釈して、各データの出典元が記載されており、データの解析や元データの発掘に大変便利です。
コア・サテライト運用のおすすめ
分散投資や長期投資などは良く耳にしますが、本書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』では、特にコア・サテライト投資についての説明が理解しやすかったです。
お金を預ける際に、また投資をする際に、分散投資をするのに、いくつもの銘柄に投資して、一つの籠に卵を入れると、籠が割れた時にすべての卵が割れてしまうという格言に則って、投資を行う方も多いでしょう。
本書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』では、もう1歩先にすすで、コアとなる投資以外に、3割以下のチャレンジ投資として、外貨預金をしたり、テーマ投信をしたり、外国株や国内株を行うと、リターン度が高まり、全体の底上げにつながると説明されています。
重要なのは、コア投資は7割に抑えること。つまり、残りの3割が儲かって4割になったら、差分の1割を7割のコアに移し替えをするリバランスを行わないと、結局基本ルールから離脱してしまい、資産運用が崩れるので注意するという点です。
必ず計算を軸にして、投資をすることが重要な点を忘れてはいけません。
まとめ
投資の本で、含み益が出たら売却しなさい、含み損が出たら売却して損切りをしなさいと書かれていたことがありました。
しかし、実際に投資をしていると、含み益が出たらいつ手放せばいいか分からず、もっと伸びるのではないか。利益を出すのではないか。この会社・企業なら大丈夫と妙な自分だけの根拠に頼ってしまうことがあります。
逆に、損になっても、きっとすぐに持ち直す、今売ると損が出るので勿体無い、など同じくなかなか売却できず痛い目を観たことのある人は、必ずいるはずです。
そうでなく、投資を行う際に、利益として何%出たら売却をするのか、何%と損が出たら売却するのかなど自分のルールを決める事が重要です。
もっと、増えるかも。もっと利益が出るかも。すぐに回復するかも。など根拠のない直感ではなく、計算に基づいて投資を行うことが重要です。明日のことは誰にもわからないのだから。
しかし、人間の感情や心理は簡単ではありません。頭でそう思っていもコントロールできない。
そんな時にプロとして第三者がやってくれると、感情に飲まれずに済むのです。そこでプロのプライベートバンカーの登場です。
しかし、プライベートバンカーに頼めるのは、億単位の資産を持つ富裕層のみ。一般人ではなかなか手が出せません。
さらに、バンカーも人間です。データの取りこぼしや抱えられるクライアントの数は必然的に決まっているのです。
そこで、AIを利用した、ウェルスナビを立ち上げたのが、本書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』の最終的な結となるのです。
AIは、AIスピーカーを始め我々の世界でも少しずつ浸透しています。出かける前に天気予報を聞いて、雨が降るのであれば傘を持っていくはずです。
しかし予報が分からなければ、自分は晴れ男だから。という根拠のない自信で出かけて結果ずぶ濡れになった経験もほとんどの方があるのではないでしょうか。
資産運用も毎日の備えも、計算や予報、データに基いて取り組んでみることが重要なのです。