『わたしはロランス(Laurence Anyways)』とは?
『わたしはロランス(Laurence Anyways)』とは、俳優であり若手監督でもグザヴィエ・ドラン(Xavier Dolan)による作品で、第65回カンヌ国際映画祭のある視点部門で上映されました。本映画祭でクィア・パルム賞を受賞。またスザンヌ・クレマン(Suzanne Clément)は、女優賞を受賞しました。
どんな内容?あらすじは?
『わたしはロランス(Laurence Anyways)』は、真面目な男性国語教師として仕事をしているロランスが30歳の誕生日に恋人のフレッドに、自分の秘密を打ち明けるところがスタート。その秘密とは女性になりたい願望があり、フレッドの洋服を借りては着用していたこと。フレッドはそんな勝手な振る舞いに激怒するが、ロランスへの愛情と彼の本望を大切にするため、彼を受け入れ一緒に過ごしていく物語。
『キャロル(Carol)』や『男と女』のような作品です。
ネタバレ
本作のポイントとしては、ロランスはゲイであるが、体が男として生まれ、女性としての姿になりたいというトランスジェンダーでもあり、そして、女性であるフレッドに対して愛情もある点。
恋愛要素として、彼の想いや気持ちの変化について、観ている側もフレッドと同じように最初は戸惑いながらも理解していくでしょう。
もっと言うならば、この複雑化した心情を丁寧に理解するほど、観ている側の力量が試される作品でもあるのです。
アート性に優れた演出、美術、衣装デザイン
ストーリーだけを追うと、クィア映画祭などでも取り上げられる作品内容ですが、9歳から子役として、映画人として活躍してきたグザヴィエ・ドラン。プロットの良さに加えて、衣装や美術の華美な美しさと、突飛な演出力に芸術映画としても魅了されます。
例えば、ロランスに打ち明けられたフレッドの衝撃的な心情を、天井から大きな水が流れこみ、ソファに浸るフレッドに被されます。下手をするとコントのような見せ方ですが、色合いやカラーバリエーション、カメラの視点が有能で、「ああ、こんなに辛い気持ちなのか」と、セリフ以上の見せ方で訴求しているのです。
ラストの余韻
非凡なプロットと、眼を見張る演出に加えて、映画的素地も忘れていません。
ラストは、ロランスとフレッドが初めて出会った場面の回想で終わり、ふたりがいかにして出会ったのか、恋人としての関係性が生まれ始める、胸の高鳴りが観ている側でも十分に伝わってくる、なんとも余韻と後味が素敵な締め方で感動しました。
出会いと別れ、安直に言えばそれだけですが、それ以上の煌めきと幸福は、恋愛として素晴らしい出来事です。起承転結を上手に構成されているので、なかなかわかりづらい恋愛模様ですが、恋愛経験をしたことがある方なら、理解できるでしょう。おすすめです。