『芸術とは何か 千住博が答える147の質問』とは?
『芸術とは何か 千住博が答える147の質問』は、日本の画家で京都造形芸術大学教授である、千住博が美術や芸術、アートについての簡単な147の質問に回答する芸術初心者向け指南書のような本です。
どんな内容?あらすじは?
『芸術とは何か 千住博が答える147の質問』は、芸術とは何かという質問を通じて、人間とは何かという本質に迫る内容が特徴です。
とはいえ、至るまでの哲学性の話よりも前に、おすすめの絵画の見方だったり、美術館やオークションとは何かということまで、美術に関心がある人や「イマイチどやってみたら良いかわからない」方にまで優しく解説してくれています。
『武器になる哲学』や『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』に似た内容です。
ネタバレ
例えば、「人間は、なぜ絵画を描くのですか?」という質問に対して、
「美味しいワインを飲むと、なんとかしてその魅力を他人に伝えたくなります。また、面白い映画を観終えると、その内容を話したくなります。このように、人間は感動をコミュニケーションしたくなる本能があるのです」と、解説しています。
他にも、「年齢や人生経験によって、絵画の見方は変わりますか?」という質問に対しては、
「文学でも映画でも、年齢を重ねることによって別の見え方をした体験は、みなさんもお持ちでしょう。絵画のなかに入れられた花や水差しの意味がわかってくることもあります。そうすることで、その作品の深部までどんどん見えてきて、絵画がおもしろくなってきます。」
と、言葉のチョイスも上手に簡略的にそしてわかりやすく説明しています。読みやすいですよね。
なぜ、古典は生き残ったのか?
古典をしっかり読んだ方はあまりいないかもしれません。
本書では、古典についても語られています。
「100円のガラスのコップが、2000年残れば、2000年前のガラスということになるから、国宝になるでしょう」と。
「人々が「これは本当に大切だ」と思えることかどうか。それもときを超え、時代も空間も超え、子の代、孫の代に至るまで子々孫々そう思い続けていられるか、ということです。」
と、かなりわかりやすく教えてくれています。確かに、昔からの内容で難しそうと敬遠するのではなく、過去の人たちが大切にして渡してきたバトンを受け取るのも素敵なことです。
現代美術を理解するためには、学習が必要か?
シャツや靴は、自分でかっこいいとか色が良いとか、このネクタイとシャツの組み合わせはこのスーツにはあまり良くないとか、色々考えて選ばれています。その同じ目線でアートを観るのです。
正直な自分の内面を作品に照射し、同じ人間としての自らの心を映し出す鏡として作品に向かい合い、作者とはいささか境遇や背景は違っていても、同じ人間としての立場で謙虚に対峙することが、現代美術への鑑賞のアプローチです。
画家がお金儲けをすることは悪いことですか?
お金や金銭的な面についても言及しています。
「お金設けをしたいなら、芸術家や画家になるのはあまり得策ではありません。本当に才能のある何十万ににひとりくらいしか、お金持ちにはなれないからです。」と。
「その才能ある人たちは、本当に絵が好きで、結果的にお金が入ってきても、そのことには無頓着なものです。そして、お金をそのまま次のプロジェクトの準備に使ってしまったり、よりよい画材を買ったします。だから、気持ちとしてはお金儲けをしているのではないです。」
「お金儲けは悪いことではありませんが、金持ちになろうとして芸術家になって、それで成功したという例は、ちょっと聞いたことがありません。芸術とは、そんな甘い世界ではないのです。結局、絵の才能の勝負なのです。」
まとめ
美術館や展覧会へ行くのが好きな筆者ですが、その私でも、たくさんの絵画やアートに触れて、「わかった気をしていたり」、「よくわからないまま、正解を知らないまま」作品を鑑賞していたのは事実です。
けれど、本書を読んで、ある意味それで良いし、人生を彩る一つとして芸術が寄り添えられていることに気が付きました。
これから、芸術大学や芸術家を目指す方にも、ぜひ読んで欲しい一冊でした。