『手取り10万円台の俺でも安心するマネー話を4つください。』とは?
祥伝社より山田真哉氏、花輪陽子氏の共著として平成25年12月10日に出版されました。タイトルだけ見ると、山田真哉氏お得意の会計本かと思いきや、ある意味は当たっていますが、ニコニコ生放送で行われた対談内容が書籍化されたものでした。
ニコニコ生放送とは?対談本は良いの?悪いの?
ニコニコ生放送はご存知、インターネット放送で、動画で放送され、視聴者はニコニコ生放送にログインして、(しなくても見られる)視聴者参加型の放送です。
画面の中の人たちが他愛もないことを話し、対談し、それを視聴者が揶揄したり質問したり意見を言って成り立つ世界です。
逆を言うと、放送系の対談は、収録ならまだしも、生放送となると出演者が好き勝手に話たり、会話がままならなかったり、落とし所が見つからず、オチがない状態で終わることもしばしば。
それを書籍化するなんて、相当やっつけ仕事だなぁと思い読み始めました。(対談モノは書き起こしがメインとなるため、工数が減る分、内容の薄い本になることも多いのです。)
しかし、これが想像より面白かった。読み始めるうちに引き込まれました。
山田真哉氏とは?
本著のキーパーソンは、執筆者でもあり対談のメインスピーカーでもある山田真哉氏。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』や『女子大生会計士の事件簿』などを作品と出版し、現役の公認会計士でもあります。
難しいと思いがちな会計についてや金銭のこと、それらをクイズ形式で紹介し、ゲストと一緒に盛り上げていくのです。主軸がしっかりしているため、話があまりブレることなく一本筋で進んでいくあたりは流石の手腕を感じました。
加えて、MCでありアンカーでもある花輪陽子氏。
彼女は外資系銀行を得て、ファイナンシャルプランナーとしても活躍。テレビ「有吉ゼミ」や「ホンマでっか!?テレビ」などに出演するなどメディア慣れしている安定感があります。本作でも話が横道に行きそうなところを上手に調整しているのが印象的でした。
そして、ゲストとして社会学者兼やおい研究家でもある金田淳子氏が登場。東大卒のエリートのはずが異色のキャラで頭がいいはずなのに、常に盛り上げ役かつ、一般人目線で回答やコメント、質問をするため、マニアックな深い穴に進まずに済んでいるのも彼女の功績でしょう。
どんな内容?あらすじは?
基本構成は4つ。「健康保険」に関する話と、「給与明細」に関する話、そして「増税・税金」に関する話と、『クレジットカード」や「ポイントカード」に関する話で進んでいきます。身近な話でしょう?
世の中生きていくうえで、働いていると自動的に没収されるのが、年金や健康保険、そして税金です。
それぞれがなぜ取られていくのか、またどうすると取られないかなどが細かく載っているのが特徴です。
たとえば、通勤手当が高いと多く引かれるのは「保険料」「税金」「家賃」「年金」「給料」「ボーナス」の中でどれでしょう?
たまに、遠方地がから定期通勤をしている人がいますが、実際には得でしょうか?
正解は、得はしません。
なぜかというと、「健康保険料」というのは総支給額から計算され引かれるからです。つまり、保険料や税金など控除を得た手取り額ではなく、全体額によって調整・設定されるため、割高担ってしまう結果となります。
さらに、健康保険証を持っている方ならご存知だと思いますが、日常的に病院へ行き機会はあまりなく、せいぜい風邪を引いたときに行ったり、歯医者へ行くなどそういった形で使うことがほとんどで大病したり大きな事故や入院と言うのは滅多にありません。その為「保険」という意味合いが大きいのですが、つまり、通勤手当を高くするあまり、殆ど使わない保険料が値上がり、実際の手取り額が低くなってしまうのです。
できることなら安くしたい保険料。だったら通勤手当も安くするのが実はお得だったりします。
ネタバレ
本著の対談は2013年に行われました。今から6年前。果たして現在でも有効なのでしょうか?
はい。有効です。というのも、2013年当時は、消費税が5%から8%、そして10%へ値上げをするという話題が出ていた時期です。
2019年時点では、消費税は8%となっており、さらにこれから10%が控えている状態です。
そうです。本著の読むべき価値は、この消費税の所が特に重要な価値を持っています。
さて、またまた問題です。
消費税が非課税となるモノやサービスはなんでしょうか?
「家賃」「生命保険料」「出産費用」「預貯金」「株式取引」「土地の譲渡および貸付」
正解は……全部です。
そうなんです。消費税というとありとあらゆるものにかかるイメージがありますが、あくまでも消費活動、つまり物を売り買いする際に発生する税金なのです。
家賃は、購入ではないですし、土地の譲渡や貸付も同じです(マンション購入はかかります)。「生命保険」や「出産費用」も消費活動ではありません。面白いのは「預貯金」や「株式などの金融取引」、これも実は投資活動であって、消費活動でないため消費税がかからないのです!
そして注意すべき点は、消費税の増税に便乗して、家賃を値上げしてくるオーナーや不動産会社がいたら、これは明らかな便乗値上げなのです。正規性が乏しいので抗議すると良いでしょう。
さらに、消費税が上がる前に買っておきたいモノやサービスも紹介されているので、10%の増税を控えた昨今でも十分に読む価値がありました。
まとめ
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』や『女子大生会計士の事件簿』などの人気ヒット作を次々生み出している山田真哉氏の手腕は、書物だけでなく、対談でも本領発揮。浅いように見えて核心を突くポイントが網羅されているので、ぜひ一度読んでみてください。とはいえ、1冊読むのに2〜3時間で読み終えるボリューム感なのも嬉しいポイントです。