『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(Life of Pi)』とは?
映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(Life of Pi)』とは、の2001年に出版されたヤン・マーテル執筆『パイの物語』を原作にし、アン・リーが監督を務め、20世紀フォックスが配給。第85回アカデミー賞では、監督賞、作曲賞、撮影賞、視覚効果賞の4部門受賞、11部門ノミネートという映画作品です。
どんな内容?あらすじは?
映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(Life of Pi)』は、インド人のパイ・パテルが幼少期からある事件までを話す半伝記的な内容となっています。前半は名前がヒンディー語でおしっこという名前でからかわれて、それをいかにして改善させたか、叔父さんにプールで泳ぎ方を教わったこと、父親と母親、兄がいて、家では植物園と動物園を運営していたこと、そして経営が傾き、カナダへ移住しようと、船に乗ったことなど、色彩豊かな映像美とコミカルな演出で楽しく観ることできました。
動物ものということで『幸せへのキセキ』や『ウォルト・ディズニーの約束』のようなファンタジーまでいかなくても、ドラマとファンタジーの半々のイメージだと思いました。最初は……。
ネタバレ
映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(Life of Pi)』は、前半の良く言えばまったり、悪くいうと冗長的な物語の流れから、家族が船に乗ったあとから、一気に展開が変わります。
大海原の嵐の中、パイ少年は寝室を飛び出し、外を見に行くと、大きな波によって船が沈むのを目の当たりにします。急いで救命ボートへ乗り込むのですが、タイミングが合わず、しかも動物ゲートから逃げ出したシマウマが乗り込んで来る始末。
高い波と雨風の中、救命ボートだけが船を離れ、一人、命が助かるのでした。
しばらくすると、浮き輪?バナナに乗ったオランウータンがやってきて、無事に救出。小型の救命ボートには、足が傷ついたシマウマと、オランウータン、そして隠れていたハイエナ。そしてハイエナによって、シマウマが襲われ、ハイエナとオランウータンの戦いのち、オランウータンは破れてしまったのです。
さらに、奥に隠れていた一匹のトラによってハイエナも破れ、いつかし小型ボートには、トラとパイ少年の一人と一匹の航海が始まったのでした。
幻想的な海の映像美
ここからが真骨頂。意思の疎通ができない動物、しかもトラとの共存をあれこれ考えながら、遭難の旅を続けなければなりません。飲料や食料も限られており、しかもトラは肉食なため、パンといったものは食べない。さらに、海で泳ぐこともできるので、最終的には空腹のため自分を襲うかもしれない。そのためパイ少年は、トラのために、魚を釣ったり、共存するために調教したりと、互いに言葉をかわさない意思疎通を交わしていくのです。
そんな共存に加えて、海では、サメが泳ぐ海や夜になると幻想的に輝くクラゲの大群、クジラ、イルカ、突進してくる、大量のトビウオまで、海の神秘に心を訴えるのでした。
無人島に着陸
四苦八苦の末、絶望を感じていたパイ少年とトラ。幸運なことに、無人島へたどり着いたのでした。無人島では、ミーアキャットの大群の群れ、真水の池、食べられる植物と、パイ少年にとってもトラにとっても、生存できる島だったのでした。
しかし、そうは問屋が卸さない。夜になると、ミーアキャットの群れは木に登り、トラもボートへ帰っていったのでした。真夜中に目を覚ますと、真水は酸に変わり、生物を溶かし、魔の島だったのです。
ここでは、長く生活ができないことを悟り、またトラと一緒にボートへ乗り込み航海へ出かけるのです。
どんでん返し
死にそうになりながらもメキシコにたどり着いたパイ少年とトラ。トラはふらふらになりながら、振り返りもせずジャングルへ帰ってしまったのでした。
それから、しばらくして入院しているパイ少年のもとへ、船の保険会社の人間がやってきて、航海の話を聞くのです。しかし虎や動物と過ごしたなどは信じられず、パイ少年は作り話を話したのです。
乗り込むときに足を怪我した親切なアジア人、母親、嫌味なコック、そして自分。コックはアジア人を殺し、その足を魚を捕まえる餌にしたこと。母親はそれに激怒し、喧嘩になったこと。コックは母親を殺し、サメの餌にしたこと、パイ少年がコックを殺したことなど。
パイ少年はこういうのです。「どっちの話がいいですか?僕はどちらでもいいですよ」、と。
宗教性と緊急避難、カルネアデスの舟板、冷たい方程式
映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(Life of Pi)』は、実は緊急避難をテーマにした作品でした。緊急避難とはカルネアデスの舟板とも言われており、緊急時には自分の命を優先していいという法律上の観点です。
しかし、この映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(Life of Pi)』では、冒頭40分ほどのゆったりとしたエピソードで、キリスト教やヒンディー教、イスラム教と3の神の話が出ており、また遭難中も何度となく神に願いを込めるのです。
また、ヒンディー教では、肉を食べてはいけないと戒律があり、道徳の観点からもパイ少年は、肉を食べてはいけなかったのです。
しかし、自分をトラだと思うことで、自分ではなくトラが肉を食べるということで、心の緊急避難をしていたのでした。
さらに、トラの名前は「リチャード・パーカー」といい、実在した事件、ミニョネット号事件の中で唯一亡くなった最年少の少年の名前がリチャード・パーカーだったのです。
まとめ
映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(Life of Pi)』は、タイトルからしてファンタジーな要素を感じていましたが、まさかラストにとんでもないどんでん返しというかネタバレがあり驚きました。
緊急避難といえば、トム・ゴドウィンの『冷たい方程式』が有名ですが、本映画も根底にはその流れを持ちつつ、宗教性とCGを駆使した映像美によって、壮大感のある物語へと昇華していったのです。名作です。おすすめです。