映画『ウォルト・ディズニーの約束』 Saving Mr. Banks とは?
いわゆるディズニー系の映画で泣いたり、胸に刺さることがあまりないの中で、本作、映画『ウォルト・ディズニーの約束』 Saving Mr. Banksは思いがけずに良い作品に出会いました。
あらすじ
本作、映画『ウォルト・ディズニーの約束』 Saving Mr. Banksは、実際にあった出来事を映像、実写化した作品です。
『メリー・ポピンズ』などで有名な作家、「P.L.トラバース」ことパメラ・トラバース(Pamela Lyndon Travers(本名ヘレン・リンドン・ゴフ (Helen Lyndon Goff))は、20年のもの間、ウォルト・ディズニーから『メリー・ポピンズ』の映画化オファーを受けていました。
新作が書けないというスランプに陥り、破産寸前。現地調査を兼ねて、住まいのイギリスからロサンゼルスのウォルト・ディズニーまで赴き、ウォルト・ディズニー本人と対面することに。契約を交わす前に、P.L.トラバースの作品内容に対する希望を受け入れることが条件となりましたが、このP.L.トラバースがとんでもなく曲者だったのです……。
P.L.トラバースとウォルト・ディズニーの関係とは?
P.L.トラバースが『メアリー・ポピンズ』に並々ならぬ想いを持っているのは、自分が書き上げた作品というだけでなく、自身の幼少期の思い出や父親や家族、そして叔母さんへの心象が残っているからです。
「メリー・ポピンズは、子どもたちのためにやってきたのではありません。」
劇中で、作品を作り上げようとしているスタッフへ指摘した作品への勘違い。ディズニーなど感動的な子供向け作品ばかり作っているスタッフに対して、細かいディテールや「ハッピーエンドにしたくない」という強い要望を放つ。表面的な部分ばかりなぞることに憤りと哀しみを抱きます。
一方で、ウォルト・ディズニーにもこだわりがあります。実の子供に対する想い、夢、また彼も幼少期にアイルランド系移民として、アメリカへ家族で移住した際に、新聞配達員として寒い冬の時期に絶望的な想いで、仕事をしたトラウマ。
「彼女のことはわかるよ。私も映画プロデューサーに『ネズミ』を売り渡す際に、闘ったから。私にはネズミしかなかったから」
ネズミというのは、おわかりの通り、ミッキーマウスです。ウォルト・ディズニーはアニメーター、イラストレーター、漫画家としてのキャリアがスタートだったのです。
同じ作家、クリエイターとして生みの苦労と喜び、ビジネスシーンに翻弄されながら、もがき戦う。
ミッキーマウスやディズニーたちは?
本作の見どころの一つに、ディズニーファンなら見逃せない、ミッキーマウスやディズニーキャラクターたちでしょう。
しかし、P.L.トラバースはファンタジーを受け入れない性格(違った言い方をすればひねくれた性格)。ディズニーもファンタジーにも嫌悪感を抱きます。
さらには、ベッドに鎮座しているミッキーマウスの大型のぬいぐるみを、窓際に移動させ、壁に向かわせて「洗練というものを学ぶのよ」と、説教を垂れる始末。
もしかすると、ディズニーファンは苛立ちを感じるかもしれません。
しかし、後半にかけて、ウォルト・ディズニー氏の想いやディズニー自体の魅力を理解し始めてから、夢の世界が登場します。そこで言い放った言葉も、辛辣で面白かったです。
ネタバレ
夢の世界というのは、並々ならぬ現実があるからこそ、出来上がるのです。そして現実に必ず出てくるのは、お金。メリー・ポピンズのバンクス。
バンクスというのは、銀行マンだった実の父親のことを指していたのです。
エンディングのスタッフロールに必ず注目してください。
P.L.トラバースとスタッフたちのやりとりが録られたテープが流れてきます。
まとめ
ディズニーランドや、ディズニー・シーなどディズニーワールドへ行くと楽しい時間を過ごせます。しかし楽しいだけ、ファンタジーの世界に懐疑的な人は、一定数いることでしょう。
本作は、そんなファンタジーに対して否定的な人こそ、観てほしい作品です。
だれかと分かち合うのに、こだわりや想いは持つべきでしょう。しかし、いつかは融合しなければ新しい世界の扉は開かれないのです。