『さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~』とは?
『さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~』とは、元々NHKで放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀〜庵野秀明スペシャル〜」の約75分版を拡大した100分の番組にして放送されました。映画・アニメーション監督の庵野秀明にフォーカスをあて、エヴァンゲリオンやスタジオカラーの制作スタッフの人たちを含めて、4年に渡って追い続けたテレビ番組です。
どんな内容?あらすじは?
『さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~』は、ちょうどシン・エヴァンゲリオンの制作真っ只中の庵野秀明、そしてスタジオカラーの人たちの公開までと漕ぎつけるまでの内容。「プロフェッショナル 仕事の流儀〜庵野秀明スペシャル〜」では語られなかったエピソードや削ぎ落とされた場面を肉付けした内容。そのため前回よりもよりディテールが語られていて、一つの作品が出来上がるまでの、産みの苦しみが伝わる番組となっていました。
こちらの放送を見る前に、シン・エヴァンゲリオンを鑑賞しておくのをおすすめします。
ネタバレ
シン・エヴァンゲリオンは文字通り、最後のエヴァンゲリオンで、TVシリーズから旧劇場版、『DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に』そして、序・破・Qの3作があり、すべてのエヴァンゲリオンを完結させる内容となっています。
『さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~』では、約4年の歳月の中で、庵野秀明そして、制作スタッフの仕事ぷりが垣間見えます。
また、奥さんである安野モヨコや声優の緒方恵美、宮村優子、三石琴乃、立木文彦、林原めぐみらの出演シーンもあり、ファン垂涎の放送内容です。
制作の流れ
『さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~』では、まず庵野秀明の登場シーンがあり、プロットを考え、合宿があり、台本づくりへと進みます。正解が監督を含めて誰もわからないなか、五里霧中の中を淡々と内に籠もった熱量で動き出していきます。
「監督にもわからない。ただし違うことはわかる。」と、ある制作スタッフが発言します。
そして、あるシーンでは、モーションキャプチャーと言って役者が登場人物になりきり、アニメーションを作る上での土台作りを行います。その中でも模型一つ一つのこだわりに対しても、何回も、何時間でも作り込む徹底ぶりがあるのです。
また、凡庸とし無機質な電信柱に強いこだわりをもっており、模型を始め、作品にもそれは表されています。
庵野秀明は言います。「好き嫌いにこだわる」、と。好きなものと嫌いなものあるから、世界観が作り出されるのでしょう。
余談です、筆者の知り合いのクリエーターも強いこだわり=好き嫌いがあり、それを作品作りの際には徹底的にクリエイティブにします。
好きでも嫌いでもないものは、おそらく無価値なのでしょう。
編集、そして作り直し
撮りためた作画を、今度は女性オペレーターと一緒に何度も何日もかけて編集をします。「普通が悪いわけではない」、と。言いますが、どこか納得していない様子。
軽食を用意していた別のスタッフに対しても「そういう気を遣わなくて大丈夫。食べたくなったら自分で買いに行くから」と、伝えています。自分監督だから偉いとか、無駄な気遣いをするよりも作品に時間と手間とエネルギーを使いたいのが伝わりました
「作品至上主義」
自分の命が削られても作品を届けたい、と語っていました。
さらに、内部のスタッフ、広報や直接作品作りに関わっていないスタッフにも作品を観てもらい感想を集めるのです。
中には意図と異なる受け取り方をしている方もいて、
「伝わらないものは、ないのと一緒」とバサリと、イチから作り直すことを決意しました。
アフレコ、コロナ、試写会
時間がない中、公開日は決まっているので、庵野秀明監督も自ら筆をとり、制作を手伝います。
また平行してアフレコも。前回で登場した声優シーンに加えて、追加された宮村優子さんや立木文彦さん、緒方恵美さんのインタビューシーン、アフレコシーンもあり、ここでもこだわりの強さを見せます。
しかし、未曾有の危機として訪れた新型コロナウイルス。当初予定していた公開日が延期となり2020年からスタッフや監督のマスクしている姿を目にするようになります。
また、庵野秀明監督から高い要求を求められるアクションシーンの制作スタッフの、命を削るような苦悩もあり、最後の校了後には帰路に向かう監督と大きなハグをするシーンもあり、安堵したのを覚えます。
柔らかく温かいシーンでした。
まとめ
前作「プロフェッショナル 仕事の流儀〜庵野秀明スペシャル〜」では、見えなかったシーンが多く含まれており、より理解力が高まった内容でした。
また、前回はNHKスタッフに向けられた、などという庵野秀明の強面ぶりを強調するようなナレーションなども比較的削ぎ落とされていて、より純粋に作品作りの現場に向き合った内容になっていたため、集中して見入りました。
ぜひ、NHKは、パッケージにしてもいいので、セール商品として売ってほしい内容です。