『年収は「住むところ」で決まる 来ようとイノベーションの都市経済学(THE NEW GEOGRAPHY OF JOBS)』とは?
『年収は「住むところ」で決まる 来ようとイノベーションの都市経済学(THE NEW GEOGRAPHY OF JOBS)』とは、経済学者でバークレー大学やロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で教えている、エンリコ・モレッティ(Enrico Moretti)氏が執筆し、池村千秋氏が翻訳を手がけ、2014年に株式会社プレジデント社より出版されました。
どんな内容?あらすじは?
『年収は「住むところ」で決まる 来ようとイノベーションの都市経済学(THE NEW GEOGRAPHY OF JOBS)』は、働くだけでなく、住む場所も年収や給与に影響を与えていることを説明した内容となっています。
日本語版の序章として「浮かぶ都市、沈む都市」として、第一章がなぜ「ものづくり」だけでは駄目なのか、第二章がイノベーション産業の「乗数効果」、第三章が給料は学歴より住所で決まる。第四章は「引き寄せ」のパワー、第五章が移住と生活コスト、第六章が「貧困の罠」と地域再生の条件、第七章が新たなる「人的資本の世紀」と合計7つの章からできた構成です。
不動産に注目し『2020年以後も勝ち続けるマンション戦略バイブル』や人生戦略の『ライフシフト LIFE SHIFT|100年時代の人生戦略』に似た内容となっています。
ネタバレ
素敵な家に済んだら、仕事も充実する!という本ではなく、『年収は「住むところ」で決まる 来ようとイノベーションの都市経済学(THE NEW GEOGRAPHY OF JOBS)』は、地域によって、集まる人の質が変わり、経済発展の恩恵を受けて、年収も増えていくというものです。
例えば、日本でも人気のウォールマートは、貧困層の味方と言われています。同じような質の商品を低額で購入できるため、経済力の低い家庭が集まる傾向があるのです。日本でもイオンなどのマーケットは集中したファミリー層が多いですよね。
他にも、イノベーション産業として、シアトルやボストンに見られるように、エンジニアやIT開発者が集まると、ハイテク関連の雇用が5倍の相乗効果をもたらすと言われています。
例えば、バイオ関連の技術者を探している企業と、バイオ関連の勉強や研究をしてきた求職者が、同じ地域に集結することで、雇用率が高まり、マッチング率も上がるのです。企業は優秀な技術者を獲得し、そのビジネスを活かして、業績が上がる。給与所得も増え、地域にお金が落ち、よりその街は活性化していくという図式となります。
このマッチングパターンは、仕事や求人にかかわらず、恋愛や結婚も同じだと言われています。なので、もしパートナーを探すのであれば、登録者数が多いサイトやアプリの方が、恋愛成就する可能性は高いそうです。
移住や移転のメリット
上記の通り、『年収は「住むところ」で決まる 来ようとイノベーションの都市経済学(THE NEW GEOGRAPHY OF JOBS)』では、同じタイプの会社や人間が街に集まることがメリットであり、逆をいうと、その街にいない人や会社は、成功率が下がる傾向を訴えています。
求職者であれば、地方の求人を見ても、自分が学んだ資格やスキルに合う求人がない場合、サービス業や観光業といった違う職種を選ばざるを得ず、テクニカルスキルを発揮できずに終わるのです。
企業も同じです。エンジニアを探しているのに、そのエンジニアが集まっていない地域に所在すると、応募者はエンジニアとは離れた人が多いそうです。その中から人柄やパソコンスキルがあるという次点の理由で採用するしかなく、育成期間を含めると、効率が悪くなります。
それでは、どうすると良いか?答えは明白です。それぞれ地域を移動すれば良いのです。そうすることでマッチング率が高まり、より早く事業展開できるわけなのです。
移住クーポン、移住ローン
とはいえ、簡単に引っ越しや移転はできません。企業はともかく個人なら尚更。そこに政府が目をつけたのが、移住クーポンです。日本でも地方活性化の一つとして、移住者には移住に伴う費用を受け持ったり、転居費用を負担したり、雇用を確保したりしています。移住ローンもその一つですよね。移住者が集まることで、地域が活性化するわけですが、投資としてお金を負担するのは、政府やトップの狙いでもあります。
アメリカ、シアトルでは、税制優遇措置も用意し、オンライン小売業者は、州外の顧客から間接税を徴収することを免除されています。シアトルは、大市場であるカリフォルニア州という地理的強みを存分に活かしているわけです。
学歴の低い層ほど地元にとどまる
皮肉なことに、逆のパターンも発生しています。『年収は「住むところ」で決まる 来ようとイノベーションの都市経済学(THE NEW GEOGRAPHY OF JOBS)』によると、学歴の低い層ほど地元にとどまる傾向が高いそうです。
なぜかというと、肉体労働や非専門の労働市場が概して地域単位で完結しているためです。肉体労働や非専門職の人たちは、他の都市に好ましい就労機会があってもそれに目を向けないため移住をせず、そのまま地元にとどまるのです。これは豊かな国ではイギリスでもアメリカでもどこも見られる傾向になります。
まとめ
仕事を探す時や、転職を考えるときに、住んでいる場所を起点に考えており、住む場所や地域により自分に合った雇用先があるとは理解しておらず目から鱗でした。
自分のスキルの棚卸しと、マッチした移住先を見つけるのも良いかもしれません。
知り合いにフリーのアナウンサーがいましたが関東ではライバルが多く仕事を獲得するのが激戦だったそうです。ところが、地方局に受かったのをきっかけに移住したら、東京より多くの仕事ができ、また地方は東京よりも物価や生活費が低く生活できるため、満足度の高い生活ができるようになったそうです。
そして、東京で仕事入った際だけ、新幹線や飛行機でやってくれば良いので、閉じこもった生活にもならずにすみ充実した人生を送れるようになったようです。