『アスファルト(Asphalte)』映画の感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ

『アスファルト(Asphalte)』映画の感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ フランス

『アスファルト(Asphalte)』とは?

『アスファルト(Asphalte)』とは、2021年東京国際映画祭で審査員長を務めるイザベル・ユペール(Isabelle Huppert)が主演を務め、サミュエル・ベンシェトリが監督を務めました。第68回カンヌ国際映画祭の特別招待作品にもなっています。

どんな内容?あらすじは?

『アスファルト(Asphalte)』は、フランスの貧困層が住む団地を舞台に、足の不自由になった中年男性、妙齢の御婦人と10代の少年、宇宙から着陸したNASAの宇宙飛行士と移民老婆。それぞれの関係性が、団地を舞台に物語が進むオムニバス映画です。

『バレンタインデー( Valentine’s Day)』や『恋愛小説家』のような作品となっています。

ネタバレ

フランスというとパリの綺羅びやかな町並みやヨーロッパ調の建物が思い浮かぶかと思います。

しかし本作ではフランスの貧困層や移民、庶民にクローズアップし、団地という日本でも馴染み深い場所を舞台にした作品です。

足が不自由になった男性

本映画は、何人かの組み合わせがそれぞれバラバラに展開していくオムニバスとなっており、最初に登場するのが団地のエレベーターが壊れたことで修理をすることを拒んだ男性のエピソードから始まります。

「2階だからエレベーターを使わない。だから修理費も出したくない」という彼の主張。団地の組合では、「エレベーターを使わないのであればお金を出さなくてよい」と多数決で決めるのですが、まさかその後に、足の怪我をし不自由な車椅子生活になるとは……。

彼は、住民がエレベーターに乗る時間をチェックし、誰も使わない深夜帯を中心にこっそりとエレベーターを使うのです。食料を買いにいく時間でもないため、夜の病院の自動販売機で食べ物を購入し、腹を満たすのですが、働いている看護師に見つかり、「写真家でロケハンをしている」と咄嗟に嘘を言ってしまうのでした。

中年女性と10代の少年

話は変わって、引っ越してきたばかりの女優が団地にやってきます。彼女は女優としてある程度名を馳せていたようですが団地に引っ越してきたことを考えると「成功している」とは見えない。隣室の10代の少年と何気ない交流が始まり、それぞれが抱えている孤独感や寂しさを、なんともなしに埋めていくのでした。

とはいえ、フランス映画では珍しく?誠実な内容で、多くを語らず心の交流を通した埋め合いです。けして体の交流は行われないので安心して観られるでしょう。

少し影のある寡黙な美少年を『パリに見出されたピアニスト(Au bout des doigts)』のジュール・ベンシェトリ(Jules Benchetrit)が演じており、髪の長くか細い美少年が短髪の大学生役へとまで成長した姿を観ると、感慨深いものがあります。

NASAの宇宙飛行士と移民系老婆

ラストは宇宙から物語がスタート。予定よりも着陸し団地の屋上にたどり着いたNASAの宇宙飛行士と、団地に住む移民系の老婆。

予定よりも早く帰着したため、しばらく滞在しないといけなくなり、優しい老婆の元に滞在するのですが、米人と仏人。英語とフランス語と言葉もままならないまま、それでも確かな交流があり、老婆は自分の息子のように、宇宙飛行士は親のように相手を尊重し、穏やかな時間が流れていくのです。

まとめ

団地というけして金銭的に恵まれたわけではないそれぞれの住民が、慎ましくとも幸せに、そして他者との交流で心の繋がりが芽生える『アスファルト(Asphalte)』。

3組が直接的に交流・交わることはないのですが、間接的に影響し合うのは、スポットフィルムとしての醍醐味。

ラストのある演出は、地味だとしても生きていくことの美しさを表したように感じました。

家族で、恋人と、一人でも楽しめるおすすめの映画です。

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