『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』映画の感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ

『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』映画の感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ 映画

『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』とは?

『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』とは、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』などの映画を手掛けたアン・リー監督で2005年に公開。主演をヒース・アンドリュー・レジャー(Heath Andrew Ledger)とジェイク・ジレンホール(Jake Gyllenhaal)が務めました。アカデミー賞の監督賞をはじめ、沢山の賞を受賞するほど評価の高い作品となっています。

どんな内容?あらすじは?

『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』は、1960年代を舞台にしている点が、本作を観る上で欠かせないポイントの一つです。またテキサス州やワイオミング州という保守派(田舎)が舞台である点も重要です。

19歳のヒース・レジャーが演じるイニスと、ジェイク・ジレンホールが演じるジャックは、お金がなく、羊番として国が指定した野営地で羊の管理をする仕事に就くのです。片方はキャンプ地で飯や生活の支度を、片方は夜は羊たちの近くでキャンプを張り、コヨーテからの襲撃から守る番人として仕事をしています。

しかし、ある夜テントの中で、二人は同性同士ですが一線を越えてしまいます。そこから二人は一度は気まずくなるのですが、再び愛を確かめ合い、友情以上の愛情ある関係へと発展。

仕事が終わったあとも、それぞれの生活に戻りながらも、4年毎に逢瀬を重ねる関係へと進んでゆくのでした。

19歳から40歳くらいまでの20年間を、ヒース・レジャーとジェイク・ジレンホールが26歳の年齢で演じていた名作です。

『アデル、ブルーは熱い色(La vie d’Adele : Chapitres 1 et 2)』や『わたしはロランス(Laurence Anyways)』のような映画となっています。

ネタバレ

本作を分けるとすると3つの段階で分かれています。

1つ目は、二人がブロークバック・マウンテンで出逢う青春時代。

2つ目は、それぞれが家庭を持ち再会。不貞行為を行う成熟編。

3つ目は、それぞれの子供も成長し、老年に向けて語り合う中堅編。

そして、誰しもがそうですが、10代で出逢った初恋の相手は、いつまで経っても忘れられないのと同じように、今後の人生を左右していきます。

二人はいつから恋愛感情が芽生えたのか?

本映画を観た人は、二人が初めて行為をする場面に「えぇ……唐突……」と、衝撃を受けます。

けれど、これは2回以上観ると、実は唐突ではなく、二人の想いが高まっていったことが理解できるのです。

ここで、それぞれの視点から、感想を含めて見解を書いていきますね。

ジャックの気持ち

ジェイク・ジレンホールが演じるジャックは、牧場を持つ両親のもとに生まれました。最後まで兄弟の話は出てこないため、恐らく一人っ子。

母親が奇妙な宗教にハマる話も出てくるため、幼少期から男性へ好意を持っていたのだと思います。

実際に、ラストでも、イニスがジャックの実家へ行った際に、「息子の遺灰を我が家の墓に入れる」と、仲が悪かった父親が受け入れたセリフもありました。

作中でも、イニス以外に、メキシコでの男性と妻の友達の夫との関係が含みを持っているため、イニス以外にほか2人は男性経験があることが示唆されています。

そんなジャックは、最初に出逢ったイニスに恋をし、雇い主が現れるまでの間に、髭剃りを行い身だしなみをするほど。

実際に、ある晩、二人が一線を超える出来事の際にも、夜中にイルマーの手を握り、自分に抱きつかせるほど能動的に引っ張っていました。

気持ちの展開を見ていくと、

イニスと出会う→密かに好きになる→一緒に働く→2週間たちイニスが心を開いて身の上を話してくれる→熊に遭遇し怪我をする→傷を癒そうとする→テント前で寒そうに寝ているイニスを気に掛ける→一緒にテントで眠る。

と、「なんか気になる」→「可愛いな」→「大丈夫か?心配だ」→「もっと寄り添いたい」と、気持ちの変化がわかりやすいですね。

イルマーの気持ち

続いて、イニスの気持ちです。実は本作は寡黙で口下手なイニスの心情は、登場人物たちも観ている側も察するのが難しい人物です。

そのため1回目では、誤解する点もあります。

結論から言うと、イニスはストレートではなく、ゲイ寄りだということ。

けれど、幼少期に父親が行ったことやそれを目の当たりにしたことで、トラウマとなり、また早い段階で両親が事故で亡くなったため、姉と兄に養われながら、苦労した青年期を過ごしたことが会話の端々で理解できます。

そのため、自身の本当の気持ちすら心の奥に鍵をかけてしまっていたのです。

では、イニスの心情の変化を見ていきましょう。

ジャックと出会う(特に何も思わない)→羊を集めている最中にジャックが暴れん坊の馬を乗りこなす姿を見る(かっこいいな)→キャンプの設営や仕事を上手にこなすジャックを見て器用な自分にはない魅力的な人物だと惹かれていく→自分の過去の出来事を話すのを優しく受け入れてくれる→熊に遭遇し怪我をする。優しく労ってくれるジャックに心が傾く→自分の気持ちを誤魔化すためにジャックとは接触をできる限り取らないように一人で寝る→寒さに耐えきれず、ジャックに言われてテントで寝る→背中を向けて寝ているジャックに手を引かれて抱きしめてしまう→混乱するが、欲望が止まらなくなる→翌朝自分の気持ちを考える→翌晩、やはりジャックに触れたくて再度二人は一緒に過ごす。

と、イニスの固い心の扉(と本音)を開いたのはジャックでした。

欲望だけの過ちであれば1度の接触で済むはずが、2度めはイルマーから接触したのです。

さらに、雇い主から、1ヶ月早く仕事の終了を告げられた際も、「お金が足りない」とボヤきつつも、丘の上から一人景色を眺めては、この愛おしい時間が終わってしまうことを悲しみ、その姿を観たジャックはイルマーのもとへ行き、想いが高鳴り過ぎて、殴り合いに発展するという展開でした。

一目惚れ派はジャック、徐々に好きになるのがイニスといったところでしょうか。

そして、一目惚れ派よりも、徐々に好きになる派のほうが、恋心を忘れられないというのも、本作は第二部から描かれています。

家族を持ったそれぞれ

ブロークバック・マウンテンを離れた二人は、それぞれの生活と世間体という常識のもと、結婚をし子供を持ちます。

元々関係のあったアルマと結婚したイニスは、子供にも恵まれ、質素ではありますが慎ましく過ごしていました。

けれど、イニスの心底にあったのは、誰かを守るのではなく、誰かに守ってほしかった。

アルマではな役不足だったのです。

必死に生きる毎日、代わり映えのしない生活、時間がない(とジャックも後で言ってました)。

貧乏暇なしとはこのことですね。

そんな時、4年ぶりに、初恋の人が訪れると連絡があり、そわそわと少年のように待ちわびている姿をヒース・レジャーが上手に演じています。

二人は、Motelへ行き、久しぶりに愛を確かめあったのです。

そこで終われば良いのですが、2日間だけと、山の奥地へ釣りに行くなど、欲望だけの関係でなく、ブロークバック・マウンテンのように誰の目も木にせず自然の中で、一緒に過ごすのが、二人にとって最高の幸せな時間でもあったのです(劇中でも、嬉しそうなイニスを観て、ジャックが「天国でも観ているのか?」と尋ねるシーンも)。

切ないラストへ

19歳で出会い、4年後の23〜24歳で再会、4年後に出会うので、最終的には40歳まで時間が進みます(その間の物語が劇的です)。

アルマと離婚したイニス。

そんなイニスに二人で牧場を経営しないかと提案するジャック。

数年に一度会う関係ではなく、男2人が生活するには周囲の目に厳しい時代にも関わらず、二人生きていく運命を願ったジャックと、

そんな上手くは行かない。どうすることもできない、と自己否認型のイニス。

結局、二人は決別したまま、ある日イニスの元へ、ジャックが事故で亡くなったと連絡が届くのです。

イニスはジャックの実家を訪ね、彼の部屋のクローゼットに、19歳のあの夏、二人が過ごした宝物のような時間の中で、イニスが着ていた、そして最後に殴り合いをし、血がついた長袖のシャツを実はジャックが持っていたのでした。

そして、そのシャツに自分のシャツを被せるように仕舞っており、そこで初めてイニスはジャックの本当の愛を知ったのです。

まとめ

ラストシーンはイニスが一人住むトレーラーハウスのクローゼットを開け、ジャックの服に自分のシャツを被せ、「Jack,I Swear(ジャック、誓うよ)※字幕では、ジャック永遠に一緒だ」とつぶやき、幕を閉じます。

本作が評価され、さらに感想が異なるのも、色々な要素が複合的に含まれている点です。

例えば、恋愛映画として見るのであれば、二人の人間ドラマだけで良いのですが、60年代の時代的とそこに蔓延る差別の背景や、自然風景の雄大さ、個人からカウボーイ社会の理不尽さ、そして自然界へと展開する広大なテーマへと昇華しており、複合的な面で、真実の愛に近づけているのチープドラマとは一線を画していますね。

ヒース・レジャーとジェイク・ジレンホールの名演を、ぜひ観てほしいおすすめの映画です。

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