『ある少年の告白(Boy Erased)』映画の感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ

『ある少年の告白(Boy Erased)』映画の感想、レビュー、あらすじ、ネタバレ 映画

『ある少年の告白(Boy Erased)』とは?

『ある少年の告白(Boy Erased)』とは、ルーカス・ヘッジズ(Lucas Hedges)が主演をし、ガラルド・コンリーの『Boy Erased: A Memoir』を原作にしたジョエル・エドガートン(Joel Edgerton)が監督を務めた映画です。

どんな内容?あらすじは?

原作は2016年の回顧文であり、2000年代以降に実際に起きた出来事がテーマの本作。

ルーカス演じるジャレッドは、高校生でガールフレンドもいるが女性に興味を持てないでいた。父親は教会の神父をしており、厳格なクリスチャン。母親もそんな家族のなかで規律を重んじる性格。

大学生になり寮に入寮すると先輩の男性と親しくなり、ある夜二段ベッドで寝ているところを襲われてしまい性的な経験をしてしまう。

いきなり襲われたわけでなく、どこかで期待しているジャレッド。しかし行為は強引で苦しみもあり、また襲ってきた先輩は他の子にも行為をしたと懺悔していた。

しかし、その先輩が実家へ電話をかけたことにより、ジャレッドの性的指向が明るみになってしまう。

家族のすすめで、転換プログラムに参加したことで物語が展開していく。

『秘密のキス(Baisers cachés)』や『アデル、ブルーは熱い色(La vie d’Adele : Chapitres 1 et 2)』のような作品です。

ネタバレ

本作は、他の同性愛者作品と異なり、恋愛や人間関係が主軸ではなく、家族とのつながり、プログラムの異端性をテーマとした内容となっているため、痛烈な作品となっています。しかも2000年以降に実際に起きた出来事やプログラム施設をもとにしているのだから、非常に時代錯誤なことが現代でも行われていることに驚きを隠せません。

どんなプログラム施設?

プログラム施設では、朝から夕方までのクラスのような雰囲気。けれども、入室の段階で持ち物をすべて預けるのと、トイレに行くのにも許可と監視員の同行が必要です。他者と話すのも憚られる状態。

クラスはワークショップのように、家系図を書いたり、その中で悪いこととされているのは何かを書かせたり、その中で同性へ性的な思いや恋愛感情を持つことを悪とさせる強引な意識改革プログラム。

さらに、男らしさをマッチョなイメージとさせ、立ち方やバッティングをやらすなど、軍隊のような矯正プログラム。

一人、またひとりと離脱したり、僅かな時間でコンタクトを取り、「早く出たいなら演じたほうがいい。本当にこのプログラムが有効だと思ってなければ」など示唆をくれるメンバーも。

闘うべき相手は誰か?

本プログラムおよび矯正施設は、刑務所でも病院でもなく、家族の強引な入院でもない。本人の意志で離れることや家族と交渉することも可能だ。

しかし、参加者の大半は未成年であり、自分がどうするのが正しいのか、何が正解かわからず、主人公のジャレッドさえ親のすすめはあっても、決めたのは自身でした。

正しさはなにか、闘うべき相手はだれか。

ジャレッドの闘う相手は、家族であり、世間であり、世界であることに気づく。

退所

父親は説得できず、母親に理解をもらう、施設を退所。その後、庇ってくれた施設メイトが自死をしたことを警察の訪問で知る。

家を出て、一人暮らしを始め、4年後。ニューヨークで恋人ができ、活動家としてメディアに寄稿した記事が本になるまでに成長。

実家に帰り、父親と改めて対話することに。

父親も怖かった。神父としての自分。父親としての自分。息子を受け入れることで壊れてしまう弱さがあったこと。

大人になったからこそわかり合えた二人がそこにはいました。

まとめ

本作のエピローグでは衝撃的な一文が載せられていました。

施設長を務めていたヴィクターが、施設をやめ、同性の恋人と静かに暮らしている、と。

そう。あんなにも矯正しようとしていた施設長本人が実は、同性愛者だったわけです。

ちなみに、ヴィクターを演じるのは、本作の監督でもあるジョエル本人です。

また、施設メイトの一人で、ある種のキーパーソンでもあるジョンを演じるのは監督、俳優としても名高いグサヴィェ・ドランが演じ、またジャレッドにアドバイスをするクラスメイトの一人を歌手のトライ・シヴァンが演じています。二人とも同性愛者であることを公表しています。

主人公を演じた、ルーカス・ヘッジズがとにかく上手。不器用でどうしたらいいかわからない思春期特有の優柔不断さを持ちつつも、好青年であり芯の強さを持つ役柄を見事に演じきっています。

仲良くしていた先輩とのシーンでは静かながら、彼の胸のドキドキが聞こえるかのよう。

僅かな期待が砕かれた辛さも上手に演じています。

また、本作では体の繋がりではない、添い寝だけをした精神的な繋がりを得た関係の相手もいて、それぞれ肉体と精神のバランスをわかりやすく表現しています。

家族や友達同士で観るのをおすすめの映画です。

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