『パラサイト』と『万引き家族』とは?
映画『パラサイト』と『万引き家族』を同じタイミングで観たので、それぞれの特徴や見どころ、感想を書いてみたいと思います。
『パラサイト 半地下の家族』は、ポン・ジュノ監督のもと、2019年に韓国を皮切りに公開されました。2020年のアメリカアカデミー賞では、監督賞、作品賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞。
第72回カンヌ国際映画祭では最高と言われるパルムドールを受賞するなど、興行的にも受賞的にも評価されました。
万引き家族とは
代わって、『万引き家族』は、是枝裕和監督のもと2018年に日本公開。こちらも第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しています。
こちらも米国アカデミー賞では外国映画賞にノミネートされるなど、幅広く海外で評価されました。
どんな内容?あらすじは?
『パラサイト 半地下の家族』は、貧乏な一家四人は半地下と言われる地下室のような一室に4人で暮らしていました。ひょんなことから長男が大富豪の家の長女の家庭教師を勤めることになり、4人が使用人としてそのお金持ちの家に寄生していくという、物語です。
『万引き家族』も同様で貧乏な5人家族の元に、一人の幼子が加わり6人で万引きを含めて小さな犯罪を犯しながら、生活していくという物語。
両者のベースとなっているのは、お金に困っている中でも、家族としての絆や楽しさ、仲間意識が存在している点です。
『Joker(ジョーカー)』のような作品です。
崩壊していく一家
2つの映画で言えることですが、当初は順調に物語が進むのに対し、中盤から崩壊のプレリュードが聞こえてきます。
具体的には、『パラサイト 半地下の家族』では金持ち一家が留守の間に宴を開いていたところ、以前働いていた家政婦を招き入れ、実はその豪邸には地下が存在し、旦那を養っていた点です。
両家族の持つ不協和音が鳴り響き、対立。そうこうしている内に、富豪一家が帰って来る事態に。
ここから怒涛の展開へと変化していくのです。
『万引き家族』も同様です。
家族6人で楽しく過ごし、海へ行くなど思い出も作るのですが、樹木希林演じるおばあちゃんが亡くなり、家の下に死体を埋めることに。
また、長男が万引きに失敗し、骨折と病院と警察のお世話になることで、家族の問題が明るみになっていくのです。
崩壊後……結末へ
ポイントは、崩壊後の展開です。
『パラサイト 半地下の家族』は、2家族(と富豪家族)の三つ巴。富豪に寄生するだけで良かったのに、同じ寄生家族が存在することで、啀み合う。そして、お金持ち家族の人々が臭いを元に、使用人一家を遠回しに拒絶します。
無意識に蔓延る差別に、溜まっていた問題が一気に噴出するのでした。
『万引き家族』は、対立する家族がいたわけではありませんが、家族同士の信頼関係が、一つの言動や行動で薄らいでいき、絆が壊れていく。貧しさではなく、どの家庭でもある普遍的な人間同士の信頼をテーマにしています。
両者とも言えるのが、想いや絆は、貧しさや裏切りで簡単に崩壊するというものでした。
まとめ
それぞれ貧困家庭を描いた作品でありながら、『万引き家族』は血の繋がらない家族の絆や温もりを描く人間ドラマに、『パラサイト 半地下の家族』は一家の想いや家族愛が滅びていく姿を映し出した悲劇でした。
特に『パラサイト 半地下の家族』は前半のコメディ要素に加えて、ディティールの深い演出や意図が組み込まれていて、監督、演出家の意図を読み取るには何度も観ると深くハマるかも。
さらに、後半の崩壊後では、アーティスティックビジュアライズが話題でもあり、シネマとしても価値を底上げしています。
もちろん、『万引き家族』も描写に関しては工夫や意図を十分に映像に反映しています。
ここらへんは、是枝裕和監督かポン・ジュノ監督かという好みの問題でしょう。
あとは、米国で話題になった『JOKER』をチェックしてみたいと思います。
それにしても、おばあちゃんの樹木希林の死体を埋めたことを警察に教えたのは、やはり松岡茉優なんだろうか……